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ライフアンドフォレスト
前橋木育
エキスパート養成講座
記念事業 VI
第16回
才の木トークカフェ盛岡
流通及び利用の促進
に関する法律」
に関する情報提供会
記念事業IV
第67回木材学会大会
公開シンポジウム
2017年度協業を合意
第1回フォレスト
カフェ講座
才の木トークカフェ
記念事業 V
木育効果実証研究事業
中間まとめ公開
前橋木育
エキスパート要請講座
前橋木育
エキスパート要請講座
あいち海上の森
フォーラム
シンポジウム
コラボ講座(C033)
前橋木育
エキスパート要請講座
コラボ講座(C040)
才の木トークカフェ
松山2017
記念事業 V
木育効果実証研究事業
結果公表
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ライフアンドフォレスト
前橋木育
エキスパート講座
に関する情報提供会
才の木トークカフェ
公開シンポジウム
公開シンポジウム
才の木トークカフェ
公開シンポジウム
記念事業I
第14回
才の木トークカフェ松山
記念事業V- i
三菱総合研究所との
協働事業
前橋木育
エキスパート養成講座
記念事業 V
木育効果実証研究事業
人と自然の共生
国際フォーラム
コラボ講座(C021)
記念事業 II
第15回
才の木トークカフェ盛岡
記念事業 V- ii
三菱総合研究所との
協働事業
インスピレーション合宿
前橋木育
エキスパート養成講座
記念事業 V- iii
三菱総合研究所との
協働事業
成果発表会
前橋木育
エキスパート養成講座
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ライフアンドフォレスト
国際スポーツイベント
関係情報提供会
才の木前橋木育講座
才の木トークカフェ
才の木トークカフェ
前橋木育
エキスパート講座
コラボ講座(C109)
前橋木育
エキスパート講座
人と自然の共生
国際フォーラム
ウッドテック2015
コラボ講座(C115)
参画局事業
「木づかい」産業における男女共同参画推進による地域活性化
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才の木前橋木育講座
公開シンポジウム
才の木トークカフェ
ライフアンドフォレスト
公開シンポジウム
才の木トークカフェ
才の木前橋木育講座
コラボ講座(C026)
人と自然の共生
国際フォーラム
才の木前橋木育講座
コラボ講座(C008)
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公開シンポジウム
木材から広がる
アロマときのこの世界
才の木トークカフェ
人と自然の共生
国際フォーラム
才の木前橋木育講座
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森を守れる住まい作りを
才の木トークカフェ
普及セミナー
人と自然の共生
国際フォーラム
才の木トークカフェ
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日本林業再生の道
Part VI
カーボンフットプリント
表示の算定支援等事業
才の木トークカフェ
コラボ体験型講座
ライフアンドフォレスト
人と自然の共生
国際フォーラム
才の木トークカフェ
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日本林業再生の道
Part V
公開シンポジウム
才の木トークカフェ
低炭素社会に向けての
新カーボン戦略
人と自然の共生
国際フォーラム
木材自給率 50%を
達成するための
課題と方策
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公開シンポジウム
低炭素社会に向けての
新カーボン戦略
エコツアー
才の木トークカフェ
人と自然の共生
国際フォーラム
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日本林業再生の道
Part IV
エコツアー
エコツアー
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国際フォーラム
NPO法人才の木・設立記念シンポジウム パネル討論会
はじめに
2007年4月20日、東京大学弥生講堂においてNPO法人才の木の設立記念シンポジウム「日本の木を使い、森と環境を守る」を開催いたしました。幸いにも、200名近い参加者を得ることができ、NPO法人才の木設立の目的と活動を知っていただく大変良い機会となりました。
参加者の顔ぶれは、「市民・産業・地域からみた木づかい・森づくり」という講演題目にふさわしく、林業、木材業、建築業、消費者・市民、学協会、マスコミなど多方面にわたっています。
議論の内容も、作り手・売り手・買い手の「連携とコミュニケーション」が具体的にイメージできるものとなり、これまでの成果を踏まえて、一歩前に進めたと実感しています。参加者にとって胸がわくわくする大変有意義なシンポジウムであったこと、講演終了後100名ほど参加いただいた設立の夕べ(懇親会)の席上、多くの方からのお話で強く感じることができました。
パネリスト
秋庭 悦子(あきば えつこ)-消費者・市民(買い手)の立場から
NPO法人グリーンコンシューマー東京ネット・理事
環境を考えて生活する「グリーンコンシューマー」を増やし、環境に配慮した商品・サービスを普及させることを目的に活動。2004年、(社)日本木材学会の「日本の森を育てる木づかい円卓会議」に参加したことが契機となって、消費者の視点で木づかい運動に関わり、「木づかい総合対策ステアリング・コミッティー」委員、NPO法人才の木理事なども務める。
井上 篤博(いのうえ あつひろ)-木材加工・利用(売り手)の立場から
セイホク株式会社代表取締役社長
セイホク(株)に入社後、取締役などを経て平成11年より現職。日本の合板製造販売をおこなうリーディングカンパニーとして、現在、日本合板工業組合連合会会長を務める。そのほか、秋田プライウッド(株)など、合板、LVL、パーティクルボード、中密度ファイバーボード(MDF)の関連企業をもち、木質材料の総合メーカーとして地歩を築いている。
湯浅 勲 (ゆあさ いさお)-木材生産(作り手)の立場から
京都府日吉町森林組合理事兼参事
民間企業から日吉町森林組合の職員に転職後、組合の組織改革に着手。職員の採用、教育方法を改善し、プロ意識の高い人材の育成を実践。日吉町森林組合では、森林所有者が放置していた森林を取りまとめて、一定規模の団地にし、低コストで間伐材の伐採、搬出を行って売り上げを所有者に返金することで、地域の森林を適正に管理する業務を中心に事業を展開している。
司会
川井 秀一(かわい しゅういち)
NPO法人才の木理事長、京都大学生存圏研究所所長
(社)日本木材学会主催の「日本の森を育てる木づかい円卓会議」議長として、2004年11月、提言書「木づかいのススメ」を取りまとめた。これを基に、行政、経済界、消費者団体、木材産業と連携して「国産材を使い、日本の森を育てる運動」を実践している。平成18年12月に新たにNPO法人才の木を設立した。
シンポジウムの背景と趣旨
(社)日本木材学会では、円卓会議や提言書「木づかいのススメ」の内容を、学会創立50周年の各種の記念事業、たとえば、愛知万博「愛・地球博」での環境教育プログラム、全国育樹祭併催シンポジウム「木を活かし、森を育てる」、「木のびっくり話」(講談社)の刊行など、幅広い広報活動を通じて紹介し、市民や消費者への普及・啓発活動を実践してきました。さらに、森林学会や森林・木材・環境アカデミー等と連携し、東京、京都、秋田、福岡において林業、木材業、建築業、消費者の連携を具体的に模索するシンポジウムを企画・開催してきました。
「木のある暮らしを通じてわが国の森(環境)を守ろう」という円卓会議の提言は、このような広報・普及活動によって学会、行政、企業、および消費者の連携を着実に強め、また同時に、木質資源が循環型社会に果たす役割について市民の理解を深めるのに貢献しました。
本設立記念シンポジウムでは、上述の活動成果を基盤に、誰が、何を、どのような方法で、これを実践するのか・・・NPO法人「才の木」の長所を生かし、短所を補う連携の仕組みを模索するために、市民、産業、地域林業を代表するパネリストを招いて、連携とコミュニケーションを深めていきたく思います。
グリーンコンシューマーは、日常の消費生活において環境に配慮した商品やサービスを消費者が選択することで、環境にやさしい社会の実現を目指して活動しています。
誰でもができることを、地道に実践することを通じて、社会を変えたいと思っているのです。地球温暖化防止のために、私たち消費者も国産材を利用し、日本の森を育てる必要があります。「森を守るためには、木を切ってはいけない」と思っている消費者はずいぶんと減り間伐の必要性も認識されつつあります。さらに、環境意識の高い消費者では適切な木材利用を肯定的に捉えつつあり、木材製品を買いたい、使いたいという行動意欲も強くなっています。しかし、何故国産材なのか、また、どれが国産材なのか見ただけではわからない、国産材製品はどこで売っているのか、品揃えは十分かなど、まだまだ消費者への情報が十分でないので、林野庁と協力して啓発活動を行っています。
作り手、売り手への希望としては、まず、使いやすい、魅力的な商品を提供して欲しい。「国産材を消費しなければならない」という理念だけでは、消費者は動きません。次に、消費者に分かりやすく、正しい、そして、トレーサビリティなど製品から森につながる具体的な情報提供をして欲しいと思います。また、木や木材製品に触れる機会が少なくなっている中で、子供達やそして大人にも「木育」が必要です。そして、国産材利用を促進するためには、木材生産から流通、消費者まで一体となって取り組む仕組みが必要ですが、「才の木」のような研究者や専門家が、そのリーダーシップをとることを期待しています。
日本の合板産業は、生産量でみると、中国、米国、マレーシア、インドネシアに次いで世界第5位にあり、320万立方メートルを生産してます。一方、需要は3位で、820万立方メートルを消費しているので、自給率は現在40%となっています。さらに、国産材の自給率は2000年には1%まで減少しましたが、その後国産材利用の振興によって2006年には消費量が100万立方メートルを越え、自給率は7.3%まで回復してきました。今後は、もっと国産材を使い、合板として製品供給をしていきたいと考えております。
森林林業基本計画では、平成27年までに300万立方メートルの国産材原木を消費することが期待されています。これを実現するためには、合板原木の安定供給が大きな課題となります。
セイホク株式会社グループは、「地球環境の保護と住環境の充実」を企業理念に掲げ、資源循環型社会の構築に貢献するべく、事業活動を展開しています。国産スギ間伐材を利用して合板を作り、さらには林地残材などの未利用材などを使いこなしていくために、リングバーカーやロータリレース、ドライヤーなどの機械・技術開発を行い、地震に強い住宅、健康住宅を造るための各種木質部材を開発、供給しています。また、合板工場から発生する剥き芯、増改築や建て替えで発生する家屋解体材等の廃木材を回収・チップ化し、異物を除去してPB(パーティクルボード)やMDF(中質繊維板)の原料として再利用しています。さらに、樹皮や劣化した廃木材をバイオマスボイラーの燃料に活用し、合板製造用の熱源・電力に還元しています。このように木質資源を100%利用し、マテリアルリサイクルで200%まで高め、さらにサーマルリサイクルによって300%の活用を目指しています。
当社は、製紙メーカーと協働してオーストラリアにおいて約1万haのユーカリ植林プロジェクトにも参画し、木質の循環的な利用に寄与しています。国内においても、鳥海山の麓に280haの森林を購入し、平成17年から19年にかけて280立方メートルの秋田県産スギ材100%の合板を生産しました。このような木質資源の循環システムは国内森林の整備を促進すると同時に、地球温暖化防止の一助になるものと確信しています。
京都府日吉町は、町内面積の87%(10,700ha)が森林に覆われ、そのほとんどが民有林、人工林率は41%です。組合員は934名、10ha以下の小規模山林所有者がほとんどです。
管内の森林は樹種、樹齢別に色分けして管理し、高密路網作業システムを採用して、10年毎に町内森林を間伐する計画を進めています。
具体的な施業計画については、まず、作業する森林区域を決め、10〜20haを団地化、境界を確認、作業道の取り付け計画を含む森林プランを作成して、所有者と受託契約を交わす。山を知らない所有者が増え、わかりやすい作業計画を作成して、作業に要する費用と補助金+木代金を差し引きした見積もりを提示しています。森林組合は地元に密着して、息長く仕事をすることが大事で、そのためにはまず信用が大切になります。
施業の手順は以下のとおりです。まず、作業道を開設し、それから30%程度の間伐・伐倒、造材、搬出、合板・紙用チップなど買い手別の材の選別を行います。枝葉は林地に残しますが、5cm程度の材まで搬出して有効利用しています。40〜50年生のスギ林は8〜10年すると混み合い、成長が止まる。そこでまた間伐を繰り返すことになります。木が太くなるほど生産性が上がります。作業が完了すると完了報告を作成し、所有者に報告します。このような一連の事業を通じて、SGEC(Sustainable Green Ecosystem Council,「緑の循環」認証会議)の森林認証を受けています。
現在、日本には間伐を要する森林が約800万haあります。人工林の8割がこれに相当します。10年毎に間伐すると、毎年80万haの間伐が必要になります。しかし、現状は30万ha程度の間伐が実施されているに過ぎないので、山が荒れてきているのです。
日吉町の施業法で毎年80万haの間伐を実施すれば、森林業はビッグビジネスになる可能性があります。ヘクタール当たり約200mの作業道を付け、100立方メートルの原木を搬出すると、費用が約100万円必要です。急斜面等で搬出が難しい地域などを考慮しても、日本全体で5000億円程度の事業規模が期待できます。この場合、原木として約4,000万立方メートルを見込むことができますので、国産材生産を現在の2倍以上に高めることになります。したがって、環境に貢献し、ビジネスとしても有望である、さらには山村に雇用が確保され、山村振興につながるメリットもあります。
川井:
これまでのシンポジウムの議論を踏まえて、連携とコミュニケーションを図るための具体的仕組みについて検討を深めていきたいと思います。秋庭さんの話題のなかにあった消費者が欲しがる商品について話していただけますか。
秋庭:
消費者の多様な要望をつかむことが大事です。木材業界の話を聞くと「まず国産材ありき」という論法が多い。消費者がどのようなライフスタイルで、何を求め、何をしたいと思っているのか、その中でどのような木材製品が必要かを、消費者の立場に立って考えることが大事です。
機能も、価格もよく、環境にも配慮されているもの、たとえば、いま、若い世代では「LOHAS(ロハス)」という健康とサステナビリティ(持続性)を意識したライフスタイルのなかで木製雑貨が受けています。30〜40代のファミリーには北欧家具が人気、団塊の世代では定年後の人生の住まいに興味が持たれています。このようなニーズに、国産材の商品が開発されるのを期待しています。
連携については、縦、横方向の各種の連携が考えられます。たとえば、小中学生を対象に木工コンクールを教育委員会と連携して30年以上も実施している木青連、森林公園の整備を自治体が市民と連携でおこなうなど、NPOや業界団体で大きな連携、小さな連携が実行されていると思いますが、現状では、それらが点の状態で繋がらず、ネットワーク化されていません。今後の課題であり、才の木がそのような点と点をつなぐ役割を担うべきかと思います。
川井:
合板が急速に国産材の受給率を高めています。今後の展望は・・・
井上:
現在、100万立方メートル余りを使っていますが、平成27年までには300万立方メートルの国産材原木を使うように努力しています。国産合板のシェアーを40%から51%まで増やせば、これを実現できます。これには南洋材合板に対抗できるだけの国際競争力を高める必要があります。
現在、持続性を確保できる国産原木で、24〜28mmの厚物構造用合板の床材を開発して、消費者が求める品質の製品、JASマークの製品を供給しています。将来にわたり、山との連携により、原木の安定供給を実現することが必要不可欠です。セイホクは宮城県石巻に主工場があり、宮城県スギ需要拡大推進会議を形成し、自治体、森林組合、素材生産協同組合、合板メーカー4社が定期的に会議を開催して、価格や量などの情報交換を密にして、安定供給に努めています。
秋田県でも、同様に、合板産業連合会を作り、森林組合はもちろん、銀行から住宅メーカーまで参画して、秋田県全体で合板産業の連携と情報交換を図っています。そのほか、スギ合板の強度補強に岩手県や北海道産カラマツ材を活用するため、関連する森林組合、素材生産業者ともネットワークを組んでいます。
川井:
日吉町では、どれくらいの原木を供給していますか。また、間伐施業により補助金と合わせてではありますが、森林所有者に材価が還元されているように見受けたのですが、低コスト施業のためにどのような工夫をされていますか。
湯浅:
間伐量は年間およそ1万立方メートルです。低コスト施業のポイントは機械化です。高性能林業機械が必要であり、そのための作業道の敷設が不可欠です。このため投資が大きくなりますが、施業の団地化により効率化を図ると共に、事業量を年間通じてコンスタントに確保することで十分賄うことができます。
現在、1立方メートルの原木生産にかかるコストは、4,000〜7,000円程度であり、将来、さらにコストダウンも可能と考えます。川下との連携は合板産業やおが粉を用いたシメジ栽培をおこなう森林組合とおこなっています。世界的にみても、循環型林業が成立しているのは先進国であり、日本においても林業の自立は可能です。
これまでの林業は、立木が細く、使えないため、山を育てるのみであったのが、ようやく使える林齢に達してきて、適切な間伐、搬出をして原木利用を図りながら森を育てることができる時代に入ってきています。したがって、原木を出していくシステムを作ることが大切です。
さらに、これを実践する人材を育成することも大切です。林業が魅力的な事業に成りうることを森林組合等、森林事業者が認識することが大切です。これまでは森林を育てることに重点をおいた施業であり、収益が上がらないので、安く不安定な雇用体系に成らざるを得なかったのですが、収益事業になれば雇用の安定もはかれ、技術を培い、若い意欲のある人材が集まります。
会場:
間伐原木の搬送可能な距離とロットについて教えて欲しい。また、日吉町森林組合の場合は、合板産業が近くにあるので条件がよいのではないか。日吉町への研修には多くの林業関係者が出かけているが、林業の現場に活かされていないのが現状です。原木の安定供給が重要ですが、この方法について聞かせて欲しい。
井上:
セイホク(宮城県石巻)の場合、当初は半径50kmの範囲で、現在では150kmの範囲から原木を集めています。長野県からも原木を安定的に運び、製品を東京に出荷しています。秋田県の場合、森林県なので100kmの範囲で原木を集めています。陸送の場合、搬送費が高くつくので、国産材の活用は製材・集成材・合板工場が近くにある県とない県との地域格差が出る可能性があります。
湯浅:
ご指摘のように、日吉町では多くの見学と研修を行っていますが、波及効果が十分でないのは事実です。
現在、Jフォレスターと名付けた研修を行っています。全国から12モデル組合から研修生を集め、実習指導を通して育て、それを種にして、それぞれが新たに10組合を指導する仕組みを実践しています。その過程を通して感じるのは、施業の取りまとめ、団地化の仕方を憶えても、造材・搬出などの林業機械一式が揃っていないこと、さらに工夫や経営努力をしなくても楽に経営できる補助金等の仕組みが、この実践を阻む一因となっています。しかし、徐々に動き始めた組合もあり、全国で10組合程度が動くと大きなうねりになると思います。
運賃については、定期的に、安定的に出材できれば10tトラックを15tトレーラに変えるなどの工夫で、搬送費のコストダウンをはかることも可能です。
川井:
距離と運搬手段により計算されるウッドマイレージを環境負荷の指標に使うことが提唱されていますが、この点、服部先生(東京農工大)からコメントをいただけますか。
服部:
距離と運搬手段による評価は目安にはなりますが、そのほかにも、環境負荷物質を排出しますので、総合的ないわゆるLCA的な評価手法が今後重要になります。環境負荷に伴うLCAを用いた予測被害額(外部コスト)は国内500kmを10tトラックで輸送する場合と北洋材(250kmのトラック輸送、千数百km以上の鉄道、舟輸送)の場合とでは、鉄道がCO2しか評価していないという問題はありますが、大差が無い反面、欧州材では6倍程度大きいと試算されています。
川井:
ありがとうございます。搬送による経費、経済的な側面のほか、環境負荷に関わる側面を外部コストとして比較し、総合的・複合的な検討をすることも大事になります。
会場:
木を切って、木材利用を推進することが、京都議定書に定める日本の森林のCO2吸収、3.9%とどのように関わるのですか?
川井:
京都議定書に定める日本のCO2排出削減6%のうち、森林の吸収分と期待されている3.9%は、森林整備が前提となっており、皆伐の場合には植林が必要ですが、日本においてはすでに植林された1,000万haのスギを中心とする人工林の間伐(あるいは、主伐に近い間伐)が主体になります。切り捨て間伐でも森林の整備にはなりますが、間伐材の利用を通して間伐を促すことが、資源循環型社会の形成にとって重要です。また、林業の自立という点でも不可欠です。現在、1,700万立方メートルの国産材が供給されていますが、3.9%を達成するには2,500万立方メートルの国産材利用が求められています。
川井:
シンポジウムを閉じるにあたり、各パネリストからそれぞれの立場で、連携を図る仕組み、また、新たに作られた「才の木」に期待することを話していただけますか。
秋庭:
これまで消費者運動として、間伐体験や炭焼き、あるいはシンポジウムを開催してきました。参加された消費者は理解が深まり、大変好評ですが、十分な情報が行き渡っているとはまだまだ言えません。「才の木」からもっともっと積極的に木を使うことの重要性を、わかりやすい言葉で発信して欲しいと思います。
井上:
国産材の活用を技術で支援していきたい。昨日ロシアの会議から帰ってきました。
ロシアでは木材を含む天然資源を国家的に管理していく動きがあります。ロシア材の輸出に段階的な関税をかけ、最終的には80%の関税をかけることが話題になっています。
一方、マレーシア・インドネシアの合板に関わる会議の報告では、マレーシアの生産が増加しているのに対し、インドネシアは激減しています。違法伐採の禁止が大きく影響しているものと思います。このように国産材の活用には内外共に追い風が吹いているので、森林産業と連携しながら、原木と合板製品の安定供給に努めていきたい。
湯浅:
原木を出しても使っていただけなくては意味がありません。2年前までは全く売れ口が見つからず大変困りましたが、幸い合板産業に出口を見つけましたので道が開けました。
森林組合でも地域の森林を取りまとめて、森林管理をしながら原木の安定供給ができることを示してきましたが、これを書籍で出版してより広く市民の皆さんにも知っていただきたく思っています。
今後は、より高度な施業技術や森林管理を開発し、低コスト林業に貢献していきたい。
川井:
「国産材利用を推進し、山と環境を守ろう」をキャッチフレーズに、林業、木材産業、消費者の立場から連携とコミュニケーションをキーワードにしてパネル討論を行いました。
林業からは、安定供給のための施業の取りまとめ、作業道・高性能機械の導入、人材育成について、また、木材産業からは100%の有効利用、リサイクルで200%、300%まで活用する技術について大変明るい展望を伺いました。
また、「才の木」に対しては、オピニオンリーダーとして、わかりやすい情報をもっと発信し、消費者や産業界を先導していくべき旨、要望がありました。
本日は、「才の木」の門出にふさわしく連携・コミュニケーションをはかるシンポジウムになりました。ご出席をいただいた3名のパネラーならびに参加者の皆様に改めて御礼を申し上げ、会を閉じます。